不利なレイアウト


それに対して、ポルシェ911が採用するRRは、まったく不利なレイアウトだ。
後輪より後ろに重いエンジンを収め、車高も決して低くはない。
当然、車体の端に置かれたエンジンは、運転操作によってヒモの先につけた重りのようにボディを振り回す。

これを打ち消し、機敏に走るためには、乗り手がその特性をキチンと理解し、
操ってやらねばならない。

具体的には、コーナー手前ではしっかりと荷重を前輸にかけてやり、コーナリング中は
アクセルを踏むことで、外に飛び出そうとする後部の慣性力と前へ進もうとする駆動力をバランスさせてやる、という操作が必要になる。

運動性能が命


その魅力を「やはりあのレイアウトはポルシェだけの独創ですし、乗ってみると、
踏んだら踏んだだけ曲がるのもポルシェだけなんです」と語る。

少し難しい話になるが、運動性能が命のスポーツカーは、重心を低く、なるべく
車体中央に置くことが理想とされている。

エンジンをドライバーの背後、後輪の前に置くミッドシップはその代表だ。
そうすることで、アクセルやステアリングの操作によって重いメカニズムが車体を
振り回す力慣性力を抑え、機敏な動きが可能になるというわけだ。

ポルシェ


子供でも知っているあのポルシェ。
珍しいポルシェ専門ディーラーに話を聞く機会があった。
「スタッフがみなフリークでして。
いろいろ痛い目にもあってますが、逆に経験豊富でやりやすい、ということでポルシェ
専門店になりました。
928や944のFRポルシェも扱いますが、やはり中心は911ですよね。
私も業界入り前からさんざん授業料を払って、今でもローンを背負ってる身ですし」
と苦笑する。

1963年のプロトタイプ登場以来、つい最近のフルモデルチェンジまで、
空冷水平対向エンジンのRRレイアウトと、あのカエル顔のスタイルを守り通した
91シリーズは、数あるスポーツカーの最高峰と讃えられ、モータージャーナリストを
はじめ、プロにも愛好者は多い。

リース車両


一面、それは真実ではあった。
が同時に、それには理由があった。
日本における輸入車と、それを購入する人々、
両方の特殊な"地位"がそのような非常識な状態を作りだしていたのだ。

かつて、輸入車国産車など足元にも及ばないほど上出来の存在とされていた。
たしかに、20年以上前のスーパーカーブームの頃までは、技術的にも、
また品質的にも、国産車は欧米の輸入車に後れを取り、
性能的にも圧倒的に引き離されていた。

現在日本車は世界でもそれなりの地位にいるが、
かつては差があったのだ。
ヤマトリースの業務用リース車両が使われていたりもする。
中古車だと価格も抑えられるし、便利なのだ。

車輔本体価格


150万円(ただし、車輔本体価格だが)あれば、しっかりベンツの魅力を備えた、
冠婚葬祭、どこにでも乗り着けられる程度のクルマが手に入る。

そりゃ、新車のピカピカを想像されては困るが、少なくとも、
国産車の普通の中古車と同程度のクルマは容易に探せる。

問題は、二番目の声だ。
かつて、ベンツに限らず輸入車は金がかかるというのが通り相場だった。
ちょっとぶつけただけで飯金代が数十万円、
車検に出せば100万円コースは当たり前、などと言われたものだ。

新車なみのこの予算


150万円のベンツ。
もちろん、新車が買えるわけはない。
中古車だ。
しかし、国産大衆車の新車なみのこの予算で、正真正銘のベンツが実際に買える。
これはけっこう、グラッとくる事実ではないだろうか。
しかし、多くの人は次にこう思うだろう。
「ベンツと言っても、ボロボロのガタガタなんじゃないか」
「買ったはいいけど、次々壊れて、エラく金がかかるんじゃないか」
最初の感想に関しては、決してそんなことはない。